2010年9月1日水曜日

漆・漆工芸の文化

 漆は、九千年前にはすでに鏃(やじり)などを固定する接着剤として使われていました。また、器としても縄文時代には使用されていました。


飛鳥・奈良時代、大寺院の造営にともなって仏像や仏具、調度などを塗る螺鈿などの精巧な漆工技術が広まってきわめて芸術的格調の高い漆工芸の優品が数多くつくりだされ、それらの技法はその後今日まで日本の漆工芸の伝統の源となっています。

平安時代・・・・・漆で描いた絵模様のうえに金銀粉を蒔きつける蒔絵技法が好まれるようになります。

螺鈿など他の装飾技法とあわせていっそう豪華さを引き立たせる技法です。


桃山時代・・・・・独創的な桃山文化が開花し、それを象徴するような、秋草など日常に見られる絵柄と片身替わりと呼ばれるデザインを、平蒔絵に針描き、絵梨地、蒔き放しといった「高台寺蒔絵」とよばれる技法で、大型の棚、厨子や室内装飾がつくられました。

江戸時代・・・・・繊細な地塗り、線描きなどによる蒔絵の技法が主流となり江戸初期には、幕府や諸大名の間に、蒔絵師をかかえて競って婚礼の豪華な調度をそろえることが流行りました。

 長崎の出島からは、多くは出島の商館長達の脇荷として、漆黒に透明感を持った艶のある肌に金銀の蒔絵や螺鈿で装飾された洋櫃などの調度や家具がオランダ経由で大量にヨーロッパに輸出されました。

しかし、当時でもあまりにも高価なため、ヨーロッパでは日本の漆器をモデルに洋塗料のシェラックなどを使って日本の蒔絵風のデザインを施した家具がつくられるようになりました。その当時のヨーロッパでは漆器を「ジャパン」と呼び、似せてヨーロッパでつくられたものは「ジャパニング」と呼ばれていました。